ブランディングとは、企業や店舗、商品やサービスの価値や概念を明確にし、共有することで顧客は当然のことながら提供側も含めた、関わる者すべての共感状態を作り上げる事業戦略である。ブランディングという概念が広まる前、日本では、ロゴ・シンボルなどのデザインと関連する店舗やパッケージ、ツールの統一展開デザインがメインであった。そのためビジュアルイメージデザインをブランディングと捉える向きもある。しかし、本来、ブランディングは提供側と顧客、そして関わる者すべてで、ブランド価値や概念を共有するための活動全体を指す。
高度成長期、右肩上がりの経済状況や、商品サービスが発展途上の状況下では、人々の消費欲が高く、提供側も商品イメージの大量投下で、多くの顧客獲得を目指した。しかし、商品サービスが行き届き、情報の抽出や共有が容易な現在の日本では、大量顧客の獲得よりロイヤルカスタマーを育てることが重要である。ゆえに、いわゆるファンづくり戦略として、ブランディングの有効性が注目されている。競合する商品やサービスとの機能面での差別化は難しくいわゆる付加価値の創造にも限界がある。そうした高度情報化社会、成熟した消費環境下では商品やサービスとの提供側は、自分達ならではの価値や、ユーザーとの絆の本質、商品やサービスでもためされる。すなわち体験の明確化が必要であり、結果ブランディング活動は、経営戦略や事業戦略をも伴う場合が多い。
競合との差異化、ブランド・ロイヤルティの向上、価格競争の回避などが期待されるブランディングだがその効果の範囲は、対外的な部分のみならずいわゆるインナーブランディングの効果が非常に高い。自社や自分たち自身の価値を強く再認識することで、事業や活動目的、方針が明確になり、結果、開発や製造、販売意識の向上、離職率の低下さらには求人あり方と効果を変えることも可能になる。このように、広報のみならず、企業事業戦略や人財戦略にまで深く関わる活動が、ブランディング活動の本質である。